interview 社員インタビュー

新薬開発のプロジェクトリーダーに若手の研究開発担当者を抜擢。

―― 貴社が開発している「オーファンドラッグ」について教えてください。

早川/簡単に言えば、国内の患者数が5万人未満の希少疾病を対象にした医薬品を指します。世界には希少疾病が7,000種類あるといわれますが、難病であるがゆえに開発が非常に難しいこと、しかも、患者数が少ないことから開発コストが回収できない恐れも考えられるからと、研究開発まで進んでいる希少疾病はごく僅かに留まっています。

春山/命が救われる可能性があるのならば、新薬開発を進めるべきと考え、当社では2010年からオーファンドラックの開発を進めてきました。最初は小児がんの治療薬の開発から進め、2016年には急性リンパ急性白血病・悪性リンパ腫治療薬の製造販売承認を取得しました。現在も複数のオーファンドラッグの開発を進めています。

早川/2018年4月には、新たに「開発センター」を立ち上げました。近年、大原薬品といえばジェネリック医薬品での実績が注目されていますが、社内外に新薬に注力しているというメッセージを発信する意味を込めて、従来の開発系の部署を再統合。新薬とジェネリック両方の開発組織を一体化して、より効果的な開発を実践しようとしています。

早川 穣

取締役 研究開発本部長早川 穣

―― 春山さんは入社8年目ながら重要な開発に携わっているとお伺いしました。

春山/肝硬変の治療薬開発において、プロジェクトマネジメントを任されています。現在は治験実施中であり、そのデータなどをチェックしていくのはもちろんのこと、CMCの検討、知的財産、財務、ライセンス交渉など、ソリューション的にアプローチする大原の方針のもと、幅広く業務をリードしています。

早川/春山は肝硬変の治療薬開発の最初の一歩である導入評価から担当しています。研究所のメンバーと同行して中国の原薬製造工場の視察も行っていますし、動物を使った毒性試験の際には研究所のメンバーとのプロトコール検討に加わっていく予定です。文字通り開発のキーマンとして活躍してくれています。基礎・臨床開発から承認までトータルに関わることができるのが、当社の開発の醍醐味。しかも若くして新薬開発の中心に立つチャンスを与えています。

春山 雄史

開発センター 臨床開発部開発三室 室長春山 雄史

小児がんをはじめ、切なる思いで待ち望まれている治療薬の開発に着手。

―― 肝硬変は身近な疾患に思えますが、オーファンドラッグの領域に入るのですか?

春山/いまだ満たされていない医療ニーズ――アンメットメディカルニーズという意味では、まさに解決が必要な分野となっています。肝硬変の多くはC型肝炎ウイルス感染が原因ですが、C型肝炎ウイルスそのものに効く薬は存在している一方、肝硬変自体には治療薬が存在せず、症状を抑える対症療法に頼るほかはありません。当社では、あるベンチャー企業が見出した化合物に着目して、肝硬変の原因である“線維化”を防ぐ治療薬の開発に取り組んでいます。

―― 早川さんは小児がんに特に深くかかわっているとお伺いしました。

早川/小児がんの患者さんは年間2,000~2,500人と、他の多くの疾患に比べればごく少数ではあります。しかしながら、5歳以降の子どもの病気による死因は、事故等を除けば1位が小児がんとなっています。一口に小児がんといっても様々な種類がありますが、疾患によっては年間50人しか発症しないものもあります。だからこそ、最もアンメットメディカルニーズがある分野だと考えて、私どもは開発に着手しました。幸いにも当社はジェネリック医薬品で確かな事業基盤を形成しました。そこでの経験を活かして、社会に貢献していこうというわけです。

春山/現在、小児がん分野では急性リンパ性白血病・悪性リンパ腫・神経芽腫・神経膠腫の治療薬に取り組んでいます。また、抗がん剤を大量に投与する治療では時に薬物中毒が発生することがあるため、薬物中毒を軽減する治療薬の開発も進めるなど、当社では疾患の治癒だけでなく、治療全体の問題解決も目指しています。

早川/小児がん患者の親御さんは、我が子の病を治そうと懸命に情報を集めています。ときに日本では存在しない海外の治療薬を、親御さんが発見し、当社に相談を持ちかけられることがあります。実際に難治性の神経膠腫の治療薬は親御さんの要望を受けて、日本で開発を決定しました。世界のどこかに治癒する可能性がある薬が存在するのならば、患者さんとそのご家族のためにも、私たちが率先して問題解決に乗り出していきたいと思っています。

患者さんとそのご家族の想いに応え続ける。

―― 患者さん目線を育む取り組みを行っているともお伺いしました。

早川/研究開発担当者は病院の小児がん病棟待合室でのボランティア活動を行なっています。実際の患者さんと直接触れ合えば、自分が何のために働くのか、引いては、何のために生きているのかが見えてくるはずです。研究開発担当者のモチベーションを高めるためにも、これからも続けていきたいと思っています。

春山/私もこの活動に参加したことがありますが、リアルな医療の最前線では、教科書や文献ではわからない大変さがあるという事実を痛感させられました。また、直接的な活動の他に、チャリティーマラソンへの参加や、会社としては小児がん基金の設立や、年末には血液がんの患者会の方に全社員に向けての講演を行って頂く予定で、新薬開発を切実に待っておられる患者さまに寄り添っていければと思っています。

インタビュー

―― これからの開発センターの在り方、そしてお二人の目標は?

早川/医薬品の開発は10年スパンの時間がかかります。ときに失敗をすることもありますが、若いうちならば何度失敗をしても、やり直すチャンスが多々あります。だからこそ、若い人材にチャンスと権限を与えて、失敗を成功の糧にしてもらえるような組織にしていきたいと思っています。

春山/私の手掛けている肝硬変の新薬は、世界で初めての治療薬となる可能性があります。未知の世界だけに誰も治療データを実証しておらず、ハードルは極めて高いですが、待ち望まれている薬でもあります。実際、肝硬変の患者さんからのお問い合わせを、必ず月に数件ほどいただいています。1日も早く治療薬として実用化を目指したいですね。

早川/私の専門領域である小児がんでいえば、明日の夢を描けない子どもがいる現実がある一方、私たちが薬を作ればその子の人生を変えることができる可能性が生まれます。しっかりとした薬を世に送り出し続けたいと思っています。

春山/世の中に存在していない薬を作るこの仕事は、非常にやりがいが大きいですが、決して華やかな仕事ではありません。成功のためには一つひとつ、地道に細かな物事を積み重ねていくほかないと肝に銘じています。